令和4年12月国保連請求データによると、共同生活援助の支給を受けている受給者は、142,323人。
令和5年4月国保連請求データによると、施設入所支援の支給を受けている受給者は、124,194人。
明らかに、共同生活援助の入居者数が、障害者支援施設の入所者数を凌駕し、施設から地域へという「地域移行」は着実に進み、「地域共生社会」も構築されてきているように思われる。しかし、一方で多様な経営体が共同生活援助事業所の経営を行い、劣悪な運営を行う事業所もあり、虐待リスクが支援施設を上回り、まさに「質の確保」が早急な課題になっている。
とは言え、知識としては共同生活援助(グループホーム)を知ってはいるものの、入所施設に長年従事してきたLooker-onにとって、何かピンとこない、まして何でピンとこないのかその正体もよくわからない状況が続いていた。
最近よく問題視されることに、一人の職員が、実態としては、包括的な支援を行っているのにもかかわらず、常勤換算上時間帯や日によって「世話人」「生活支援員」という職種身分を使い分けて登録されて勤務表に記載されたりしている。また、多くの事業所で世話人が高齢の女性であるところが多く、後に続く者がなく、人手不足に困っているとも聞く。さらに最近では、重度障害者や強度行動障害の方も多く利用しており、すでに公的規制が低い第2種社会福祉事業の域を超えてきているのではないかという声も業界内で聞かれるようにもなっている。この問題も、これまでと同様歴史や多制度と比較して考えることで、自分の中のピンとこないものの正体を探ってみた。
先ずは、そもそもグループホームとは何か?を先進的なモデルである北欧から考えることから始めよう。
先ずは文献をインターネットから検索してみた。
①「知的障害者グループハウジングの居住水準向上に関する研究―北欧の事例研究を通して」(住総研研究年報No.30 2003年版 http://www.jusoken.or.jp/pdf_paper/2003/0213-0.pdf)
②「知的障害者のグループホーム べレヴュー15 報告1 スウェーデン・イースタッド(全障研HPの中にある「薗部英夫の個人WEB」北欧研究ノート2018内https://www.nginet.or.jp/kinbe/SAS/2018kenkyu/2017Ystad.pdf)
③「スウェーデン・ヨーデボリ市における重度障害者を対象とするグループホームの建築的状況に関する研究」(日本建築学会技術報告集 第27巻 第65号,315-320,2021年2月https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijt/27/65/27_315/_pdf)
*この論文は、①を参考文献に引用しているので、後継論文として読んでも興味深い。
論文①で明確にされているが、
「GHは,一般に下記の室空間によって構成されている。
・居住者の個人的領域:Private space =住戸(あるいは,居室)
・共用領域:Common space(「コモン」と総称する)
- 居住者の共用滞在空間=共用居間・食事室・厨房
- 居住者の共同利用設備=洗濯室・倉庫
- ケアスタッフのための諸室=事務室・宿泊室など
前述の既往研究を参照しながら,室空間の確保のされ方によって,住居形式を下記に示す定義に従って4タイプに類型化した。
〈Ⅰ:シェアード・ハウジング(イナック型)〉(Shared Inackorderingshem Type)
:一住戸に複数が居住し,居住者の個人的領域は居室のみで設備等は共有する形式
〈Ⅱ:シェアード・ハウジング(設備付加型)〉(Shared housing with sanitary)
:居室に衛生設備が付加された形式
〈Ⅲ:コレクティブ・ハウジングCollective housing〉
:キッチンと衛生設備を備えた複数の住戸と,共用領域によって構成された住居形式
〈IV:コーポラティブ・ハウジングCo-operative housing〉
:単独アクセス型の独立した住戸と,共用の空間によって構成された住居形式
すなわち,住居であるGHの個人的領域は,<Ⅰ>と<II>の場合「居室」,〈皿〉と〈IV〉の場合「住戸」と呼称することになる。」
「5.2国別の特徴
5.2.1ノルウェー
住居形式は〈Ⅲ〉と〈Ⅳ〉に2分され,面積水準は最も高い。居住ユニットも少人数で構成されており,入所施設の解体が最も早く完了し,居住者の重度化傾向が高いことに,ノルウェーではスタッフ人員の手厚さで解決していると考えられる点が大きな特徴である。従って, 2室化も進んでおり,食事も各住戸で行われる傾向が強いなど,共同生活から自立生活へ移行するための環境整 備を原則に計画されている。
5.2.2スウェーデン
ノルウェー同様に住居形式は〈Ⅲ〉と〈Ⅳ〉に2分されるが,住戸平面は2室型を原則としながらワンルーム・タイプも併存している。また,集合住宅の一部を占める場合と戸建て住宅の両タイプが併存し,これは立地条件とも関連を示している。住戸アクセス形式も〈ⅱ~ v〉の範囲に分布し,一見多様であるが基本は住戸の独立性を重視している。さらに,同一ユニットでも住居形式や平面構成が複合している場合も多い。 2000年度末予定であった入所施設解体は,完全には実現していないがもはや例外的で,グループハウジングに ほぼ移行しているため,居住者の障害の程度には幅が大きい注12)。従って,これらニーズ違いは,スタッフのケアに依拠するのみならず,同一のユニットでも住居形式 や平面構成を複合させ,この空間的な対応によっても許容する配慮が確認でき,強く評価できる点である。」
その上で、日本のグループホームの在り方について、
「ノーマルな地域生活のための『グループホーム』は,普通の生活に近い既存の一般住宅の形式を踏襲するという手法も方策のひとつではあるが,上述のような管理主義的,疑似家族的な集団生活ともいえる生活スタイルを背景に,狭小な面積水準でも成立している実態は見直す余地が大きいと考えている。こうした現状と北欧諸国との住居水準の画然たる格差を併せてみると,制度発足時に設定された『創始期』の段階から早急に脱して,施設解体が緒についた『普及期』の現時点でこれが抜本的に改められるべきであり,また、現状での軽度者中心の居住者の自立生活移行と,重度障害者の入居の促進を前提としながら,下記の計画要件を提起したい。
・住居形式のほとんどを占める〈Ⅰ〉は,〈Ⅱ〉のプロセスを経ることなく、〈III〉へ移行すべきである注13)。
・このためには,戸建て住宅利用を想定した前提から,一部で試行されているグループハウジング用住居の建設への移行を,さらに促進する必要がある注14)。
・面積水準は,各住戸(居室)少なくとも20㎡/人,延床面積45~50㎡/人程度が求められる。
・望ましくは,住戸に2居室を設けたタイプの建設も促進されるべきである。
・その上で居住者ニーズの多様性には,コモンの確保のされ方や生活集団の大小,スタッフによる個別的なケアなどで対応されるべきである。」
と提言している。
2000年初頭のスウェーデンは、施設解体期の終期の過渡期ではあったが、入居者に提供される空間は、「キッチンと衛生設備を備えた住戸」か「単独アクセス型の独立した住戸」であった。施設解体が終結した2017年論文②で注目したいのは、入居者のこの言葉だ。
「料理は自分でします。得意です。夜は簡単な肉団子、ハンバーグ、パスタもつくる。ミンチソースのパスタが好き。お菓子を焼くのも得意。この間は友だちがここに来て、泊まってくれた。」
障害を持っていても、キッチンのある住戸で自らが料理をする、人をもてなすという生活ができるライフスタイルが見て取れる。
論文③においては、
「…重度障害者の入居を前提としたGH であっても、通常の住宅と同等の室空間・設備が求められることが確認された。重度障害者であれば調理設備などを自分で使うことは困難であると考えられるが、そのような場合であってもスタッフが使用して調理することで、通常の住まいと変わらない生活 環境の創出が住戸内で可能となっている。」
スウェーデンの経験は、重度知的障害者が地域で生活する基準を示唆している。それは、住環境としては、重度知的障害者であっても、キッチンや衛生設備(具体的には、トイレ・浴槽及びそれに付帯する設備)がある住戸に生活できるようになることだ。自分では使えないから、せいぜい居室(個室)をあてがえばいいではないかというのは、本末転倒だ。我々健常者が親元を独立して社会生活を送る時、普段使うか使わないかは別として1LDKを基準に自分の住処を探すではないか。ノーマライゼーション原理はどこに行った?障害者も同じだ。まして、ハンディがあるから使うことに制限があるので、サポートが必要なのだ。スウェーデンは、だからこそパーソナルアシスタントというサービスまで開発されている。重度障害者にとって、キッチンなんか包丁や火を使うから危ないではないかと安全面を強調される言説もあるだろう。ならば、安全管理の方法を考えたらいいだけである。例えば、IH機器で統一する。チャイルドロック機能をつける。包丁を使わない調理方法で調理をし、危険な調理器具は、鍵をかけたスペースに管理する等々
キッチンや衛生設備(具体的には、トイレ・浴槽及びそれに付帯する設備)がある住戸での生活が標準であるということは、サービス提供にも大きな変化をもたらす。まず食事は、基本入居者一人のために用意されなければならない。我々が小さい頃から親に食事を作ってもらったことを思い出してみよう。子どもの好みや健康、栄養を考え、毎日飽きが来ないように献立を考え、予算を低く抑えながらもおいしく食べてもらうよう調理するというのが、我が国の食事文化だ。どれだけ、この業務に多くの母親がトライし、苦労してきたか。プロ家政婦は、この料理のスキルや家事スキルで高い報酬を得るぐらい、高度な専門業務なのだ。つまり、地域生活支援には、高度な料理・家事スキルを持ったサポートが導入されることが求められているのだ。
ただ、日本の「食事文化」に比べ、海外の食事文化は寛容だ。例えば、フランス等共働きが当たり前な国は、冷凍食品のバリエーションが豊富であり、主婦は解凍温めをすることで食事を作る時間を節約するのが当たり前だ。冷凍食品を毎日出すことを「さぼり」と非難する食事文化ではない。論文①の注10では「北欧の食事はわが国に比べて調理の手間が軽微で品数もあまり多くない。特に朝食は,比較的自力遂行が容易であることも一因に挙げられる。」と調理の手間が軽微であっても社会的に非難されることはない文化だ。20年前ぐらいにイギリスやアメリカのGHに就労した知人から食事について尋ねると、入居者と冷凍ピザとかを毎週買い出し購入したりする等、調理に手間をかけないのが当たり前だったと聞いたことがある。その点でいえば、日本のグループホームや地域生活支援では、住戸の整備に加えて、高度な料理・家事スキルを持ったサポーターの導入という二つの課題を負っていると言える。
翻って、日本のグループホームの設置基準はどうだろうか?
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成十八年厚生労働省令第百七十一号)
(設備)
第二百十条 指定共同生活援助に係る共同生活住居は、住宅地又は住宅地と同程度に利用者の家族や地域住民との交流の機会が確保される地域にあり、かつ、入所により日中及び夜間を通してサービスを提供する施設(以下「入所施設」という。)又は病院の敷地外にあるようにしなければならない。
2 指定共同生活援助事業所は、一以上の共同生活住居(サテライト型住居(当該サテライト型住居を設置しようとする者により設置される当該サテライト型住居以外の共同生活住居であって、当該サテライト型住居に入居する者に対する支援を行うもの(以下「本体住居」という。)と密接な連携を確保しつつ、本体住居とは別の場所で運営される共同生活住居をいう。以下同じ。)を除く。以下この項、第四項から第六項までにおいて同じ。)を有するものとし、当該共同生活住居及びサテライト型住居の入居定員の合計は四人以上とする。
3 共同生活住居の配置、構造及び設備は、利用者の特性に応じて工夫されたものでなければならない。
4 共同生活住居は、その入居定員を二人以上十人以下とする。ただし、既存の建物を共同生活住居とする場合にあっては、当該共同生活住居の入居定員を二人以上二十人(都道府県知事(指定都市及び中核市にあっては、指定都市又は中核市の市長。第二百十条の七、第二百十三条の六及び第二百十三条の十において同じ。)が特に必要があると認めるときは三十人)以下とすることができる。
5 既存の建物を共同生活住居とした共同生活住居を改築する場合であって、都道府県知事が特に必要があると認めるときは、前項の規定にかかわらず、当該共同生活住居の入居定員を二人以上三十人以下(ただし、当該共同生活住居を改築する時点の入居定員と同数を上限とする。)とすることができる。
6 共同生活住居は、一以上のユニットを有するほか、日常生活を営む上で必要な設備を設けなければならない。
7 ユニットの入居定員は、二人以上十人以下とする。
8 ユニットには、居室及び居室に近接して設けられる相互に交流を図ることができる設備を設けることとし、その基準は、次のとおりとする。
一 一の居室の定員は、一人とすること。ただし、利用者のサービス提供上必要と認められる場合は、二人とすることができる。
二 一の居室の面積は、収納設備等を除き、七・四三平方メートル以上とすること。
9 サテライト型住居の基準は、次のとおりとする。
一 入居定員を一人とすること。
二 日常生活を営む上で必要な設備を設けること。
三 居室の面積は、収納設備等を除き、七・四三平方メートル以上とすること。
共同生活住居の基礎単位であるユニット=居室+共有設備
一住戸に複数が居住し,居住者の個人的領域は居室のみで設備等は共有する形式(Ⅰ:シェアード・ハウジング(イナック型))であり、これは、2005年11月「障害者自立支援法」が公布されてグループホームの基準が定まってから何ら変更はないのだ。
そもそも、居住者に居室のみをあてがうという日本型グループホームはいつ定まったのだろう。研究書を探すと、次の本が見つかった。
「知的障害福祉政策にみる矛盾 『日本型グループホーム』構想の成立過程と脱施設化」
(角田慰子著 ぷるうま舎2014年)
史料引用が多く、原史料に当たることも可能なのだが、そこまでの時間的余裕が作れないので、本書から孫引きをする形で、要約を紹介したい。(以下、後編「『日本型グループホーム』構想の萌芽と制度化」から引用要約する)
角田氏は、日本型グループホームの原型を、信楽青年寮が取り組み始めた「民間下宿」に求めている。
「施設でも家庭でもない精神薄弱者の小規模な生活の場の模索は、わが国でも既に昭和三十年代後半からありました、昭和四十年代はその裾野もかなりの広がりをみせましたが、中でも滋賀県信楽にできた「民間下宿」は、小規模な住宅での暮らしを広く紹介し、精神薄弱者の街の中での生活のあり方について多くの示唆を与えました。」 (中澤[1989] 10)
*中澤とは、中澤健 氏(1989(平成元)年当時の厚生省児童家庭局障害福祉課障害福祉専門官 グループホーム制度化に際して中心的役割を果たした)のこと。『療育の窓』70 10-13 「日本におけるグループホーム制度」より引用)
*1962年(昭和37年)より、信楽青年寮による民間下宿開始
角田氏は、著作の中で、
糸賀一夫の任命で、信楽寮の初代園長であった池田太郎の以下の言説を引用している。
精神薄弱者のための民間下宿は家族的雰囲気を高く評価したものである。家族的雰囲気は多数の集団ではつくりにくい、少数の人員構成による民間下宿ではつくり易い、家族的雰囲気をもった民間下宿が、信楽学園や信楽青年寮の生活訓練・職業訓練を終えてから受けとめる成人の場所として、いかに価値高く意味深いものであるかは、これを実施してみて驚いていることである。(中略)成人になって働くようになったこの人たちは、民間下宿が一番よいといって、そこを決して去ろうとしないのである。(中略)私どもはこの人たちがいかに庶民として地域のなかにとけこんでくらしたいかしみじみ思うことである。(池田[1973]258-259)
*池田太郎「精神薄弱児・者の教育」(北大路書房 1973)?
(本書P145より)
(2) 家庭的雰囲気を象徴する世話人像――「おばちゃん」言説をめぐって
そして、家庭的雰囲気が漂う民間下宿の実践に不可欠な要素とされたのが、 池田が「母の心を持った1人のおばちゃん」と称する世話人であった(池田 [1977] 155)
厚生省でつくられている通勤寮は寮長あり指導員ありで、施設の臭いが漂ってくる、民間ホームはおばちゃんである。施設の臭いがしてこないのである。この施設の臭いのしてこないことが、施設の教育を或る一定期間終えたものには、よき治療教育となるように思う。(池田[1976] 153)
さらに池田は、厚生省心身障害研究報告書の中で、世話人の人件費を「5 万円ぽっきりにしている」と強調した上で (池田 [1976] 152)、国に「国民の税金を使うことが少なくて、最も人間らしい処遇の出来ると申したい民間ホームの世話人に対して、人件費を取りあげてほしい」と要望している(池田 [1977] 158).
このように池田は、「施設の臭い」をさせないために、地域に密着した「おばちゃん」の素人性を高く評価し、その一方で、人件費を安く抑えられる運営上の利点を行政側に示したのである。
*文献番号が不明なので、おいおい調べて補足していくこととする。
(以上、本書P146)
角田氏の研究を読めば、日本型グループホームの原型は、働いている中軽度者が住む世話人=「母の心を持った1人のおばちゃん」がかいがいしく身の回りを世話する家庭的な賄いつき下宿にあったことが判明する。賄いつき下宿であれば、下宿人は月極め単位の契約で部屋を間借りし、 多くの場合、玄関や食堂、トイレ、風呂などは共同で、食事は「世話人」が準備すればよい。
そして、このイメージは、1989年厚生省が策定した「精神薄弱者地域生活援助事業設置・運営マニュアル」の策定に主導的な役割を果たした浅野史郎氏にも受け継がれている。
グループホームには「世話人」というのをつけます、これは、普通のおばさんでいいと思っています。「普通のおばさん」というのは、普通でなくない、非常識でなければいい、というほどの意味です、大学を出てなくてもいい、福祉施設で働いたという経験がなくてもいい。できたら子どもを育てた経験があるとか、こういう知恵遅れの人たちにそれなりの理解があればいいと思います。つまり、いわゆる常識的な方であれは誰でもいいと思います。(浅野[1989]116-117)
*文献番号が不明なので、おいおい調べて補足していくこととする。
この当時は、グループホームは世話人だけしか配置義務はなく、素人な世話人を支えるためにバックアップ施設として、通勤寮等の運営実績のある施設がその任を受け持っていた。「知的障害者通勤寮及び知的障害者福祉ホームの運営について」(平成二年一二月二八日)(児発第九九二号)(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta9488&dataType=1&pageNo=1)を見ればわかる通り、社会福祉法人しか、バックアップ施設はできない仕組みとなっており、逆に言えば社会福祉法人がバックアップすることで素人性の危険を回避し、質の担保を確保していたと言っても過言ではない。他、立地条件として、精神薄弱者援護施設や通勤寮と同じ敷地の住宅は望ましくない、バックアップ施設から30分の範囲という縛りを設け、社会福祉法人の管理統制を保障していたわけだ。
*保育所と同じ構造であることに注目してみよう。社会福祉法人の統制が効いている時は、保育所の数はゆるやかな増加傾向であったが、この規制が緩和され、どんどん保育所の数は増えていった。グループホームもある意味同様の流れを辿っている。
この歴史を眺める限り、日本型グループホームの基本形は、就労をしてる中軽度者対象の賄いつき下宿であり、とても重度者を受け入れていく枠組みではない。無理矢理、中軽度者の生活スタイル支援スタイルに重度者を押し込めて言っているだけだ。(重度者に居室だけを割り振って、食事は同じものを提供するなら、生活規模が小さくなっただけ、「ミニ施設」と批判されるそしりは免れない。)
なぜこんな無理な政策を推し進めているのだろう?
グループホーム制度が、始まって40年近く入居者にあてがわれる居住スペースは居室以上にならなかったのは、もしスウェーデン等のように、住戸を提供するとしたら、年金の範囲で無理だからではないだろうか?
考えてみてほしい。全国どこでも1LDKの住居を借りるとしたら、家賃相場は7万円以上、都市部ならば10万円以上だろう。それに食費・水光熱費を払ったら、10万円は軽く超える。一般就労や就労継続支援A型であれば、給与賃金も合わせて、支払うことはできるかもしれないが、就労継続支援B型や生活介護の利用者はほぼなけなしの収入しか得ることはできない。どだい無理なのだ。それと、1LDK並みの住戸をサービスの基本とするならば、パーソナルアシスタントの導入は不可避だ。(調理について、冷凍食品のレパートリーを増やして、労務負担を減らすことは可能であろうが)人手はさらに必要とされるだろう。以前も指摘したが、現在の居室のみでも生活はかつかつで、将来の貯蓄すら彼らは期待することもできない。それで、権利擁護で成年後見人をつけるならば、後見報酬は誰が負担するのか。グループホーム利用者への特定障害者特定給付費(家賃補助)を思い切って、5万円以上でも支給して、2.5万円ぐらいつねに手元に残るように特定障害者特別給付費(補足給付)で食費等を調整するなら、重度障害者は1LDKの住戸に安心して住むことができるし、1LDKをこれからのグループホームの標準設置基準にすれば、質の淘汰もされていくのではないかと思われる。
「世話人」を生活支援員に一本化するという議論は、食事を作り続ける家事労働をなめた話だ。それなりの高度な家事スキルが求められるのだから、本当はきちんとした研修カリキュラムや認定資格を国が用意することが必要ではないか?
こういうわけで、居室だけあてがう地域移行で自立した地域生活が送れるようになったと自慢げに説明する人の話を聞くと斜めな気持ちで受け止めてしまうのだ。ちょっとモヤモヤの正体も理解できたというわけだ。