前回の投稿後、サービス管理責任者更新研修と介護支援専門員更新研修(未経験者)が時期的に重なってしまい課題をこなすのにアップアップ。こうした時は色々重なって、「高齢化」についての講演を頼まれていて、スタッフと打ち合わせも入り、ブログの更新どころではなくなっていた。気づいたら、早2ヶ月も経ち年の瀬が迫っているのに愕然としている。
書きたいことは何個か浮かんで、メモ程度に書きためているが、時間に追われて中途半端なメモがたまっていくばかり。「介護の生産性」「個人情報保護についての国際的動向」思いついては、書き留めるが、時間がまとまって取れないので、このバタバタが終わったら完成させようと思う。
周りからは本業でないから、介護支援専門員更新研修はしなくてもいいじゃないか、とも言われるのであるが、介護保険で導入される仕組みが遅れて障害福祉サービスに導入されることが結構ある。制度の行く末を考えてついつい更新研修に参加することにしてしまう。例えば、今回の報酬改定では、障害者支援施設、グループホームに地域連携推進会議の設置が突如義務化されたが、これは介護保険の地域密着型サービス(地域密着型特別養護老人ホーム、認知症対応型共同生活介護)の運営推進会議をモデルにしたものだ。
介護支援専門員更新研修は参加するたびに、ブラッシュアップされたケアマネジメント手法が教授される。前回は、「課題整理総括表」だった。情報を集め表を埋めて左から右へいけば、ニーズ抽出ができ、ケアプランに連動する仕組みになっていている。なかなか良くできた様式だ。
今回は、「基本ケア」「疾患別ケア」に分かれている「適切なケアマネジメント手法」(令和3年度)を習得させることが大きな狙いのようだ。
「基本ケア」において、要介護状態に陥った高齢者に対する基本的なケアの内容を定めている。
「疾患別ケア」は以下の領域で分類されている。
① 脳血管疾患
②大腿骨頸部骨折
③心疾患
④認知症
⑤誤嚥性肺炎の予防
「基本ケア」「疾患別ケア」の関係は、以下のような二階建て構造だ。
*両図とも、『適切なケアマネジメント手法の普及推進に向けた調査研究事業「適切なケアマネジメント手法」の手引き』より引用
基本ケアの項目を見ると、知的障害児者に適用できる項目で構成されている。(意思決定過程の支援なぞ、意思決定支援に通じるものだ)基本スタンダードな支援を決めて、併存している疾患別にケア支援を二階建てで整理する考え方は分かりやすい。知的障害児者について、こうした構造を導入するとなると、恐らく基本ケアは、知的障害児者の生理や特性を踏まえた共通して重視すべき事項(ライフステージごとに整理する必要があるが)となり、疾患別等のケア支援については、自閉症等の発達障害、ダウン症、てんかん、精神疾患、様々な身体障害?があげられるだろうか。
✽注意深くこのブログを読んでいる人ならば、(強度)行動障害支援は、知的障害の基本ケアの一領域に還元されること、疾患は行動障害を増幅するアンプ的な役割を果たしている図式になると考えるだろう。行動障害のより根本の要因を知的障害とみなすか発達障害とみなすかという支援対象の問題にもつながることも賢明な読者の方はうすうす察するだろう。
障害福祉サービスの個別支援計画の様式については、法令で以下のように定められている。
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準(平成十八年厚生労働省令第百七十二号)
(施設障害福祉サービス計画の作成等)
第二十三条
5 サービス管理責任者は、アセスメント及び支援内容の検討結果に基づき、利用者及びその家族の生活に対する意向、総合的な支援の方針、生活全般の質を向上させるための課題、施設障害福祉サービスごとの目標及びその達成時期、施設障害福祉サービスを提供する上での留意事項等を記載した施設障害福祉サービス計画の原案を作成しなければならない。この場合において、当該指定障害者支援施設等が提供する施設障害福祉サービス以外の保健医療サービス又はその他の福祉サービス等との連携も含めて施設障害福祉サービス計画の原案に位置付けるように努めなければならない。
実は、個別支援計画(支援施設では、施設障害福祉サービス計画、それ以外では障害福祉サービス計画が正式名称)の様式は、介護保険制度の「居宅サービス計画書」の項目を参考にして作られている。
項目的に異なるのは、一枚目の「利用者及びその家族の生活に対する意向」が、介護保険では令和3年3月31日付介護保険最新情報Vol.958「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」の一部改正について(厚生労働省老健局 認知症施策・地域介護推進課)(https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2021/0401101809839/ksvol.958.pdf)によって、「利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果」と改変された。
記載要領として、提示されているのは以下の通り。
利用者及びその家族が、どのような内容の介護サービスをどの程度の頻度で利用しながら、どのような生活をしたいと考えているのか意向を踏まえた課題分析の結果を記載する。その際、課題分析の結果として、「自立支援」に資するために解決しなければならない課題が把握できているか確認する。そのために、利用者の主訴や相談内容等を踏まえた利用者が持っている力や生活環境等の評価を含め利用者が抱える問題点を明らかにしていくこと。
なお、利用者及びその家族の生活に対する意向が異なる場合には、各々の主訴を区別して記載する。
更新研修では、各々の主訴については、本人・家族の名前を挙げて、主訴を併記すると説明を受けた。察するに、本人と家族の主訴が対立する場合もあり、本人の「自立支援」という評価基準から、中立的・客観的に課題分析をするというケアマネジャーの立場性を明らかにするという意図があるのだろう。
昔から計画書の中で項目の表記が違うのは、2枚目のニーズの規定だ。
障害福祉サービス計画書では、「生活全般の質を向上させるための課題」と規定されているが、居宅サービス計画では、「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)」とされてる。
そして、記載要領として、提示されているのは以下の通り。
利用者の自立を阻害する要因等であって、個々の解決すべき課題(ニーズ)についてその相互関係をも含めて明らかにし、それを解決するための要点がどこにあるかを分析し、その波及する効果を予測して原則として優先度合いが高いものから順に記載する。具体的には、利用者の生活全般の解決すべき課題(ニーズ)の中で、解決していかなければならない課題の優先順位を見立て、そこから目標を立て、
・ 利用者自身の力で取り組めること
・ 家族や地域の協力でできること
・ ケアチームが支援すること
で、できるようになることなどを整理し、具体的な方法や手段をわかりやすく記載する。目標に対する援助内容では、「いつまでに、誰が、何を行い、どのようになるのか」という目標達成に向けた取り組みの内容やサービスの種別・頻度や期間を設定する。
障害福祉サービス計画書と居宅サービス計画書(ケアプラン)を比較すると、様式や記載要領等もっと障害福祉サービス計画書はブラッシュアップすべきことが多々あるように思われるのだ。
ケアマネの更新研修では、疾患別のケースで、模擬事例に沿って、課題分析整理表や居宅サービス計画書作成の演習を行われる。最低、5日間は演習・グループ討議を行うことになる。初期のサービス管理責任者研修は、例えば「介護」「就労」「地域」「児童」とか分野が分かれていたが、現在は成人・児童に大別され、オールラウンダーの研修資格となった。その割には、ケアマネ更新研修のように、各専門領域全般に対応できるような研修内容でもない。結局は、自分が所属している事業体のみのサービスを管理する技能しか更新されないのだ。
そんなこんなんで相変わらず研修をこなすのにアクセクしているのだが、そんな中で、国が来年度予定している「障害者の地域支援も踏まえた障害者支援施設の在り方に係る検討会(仮称)」に向け、検討委員会及び協力団体から意見収集を行うとともに、障害者支援施設への実態調査を通じて把握した情報を整理することを目的として、「障害者の地域支援も踏まえた障害者支援施設の在り方に係る調査研究」のアンケート調査協力依頼が、市町村や日本知的障害者福祉協会からメールで連絡されてきた。
どんな検討がなされるかは不明であるが、「高齢化」支援について調べたことから、障害者支援施設の在り方で見逃せない論点を書いておきたい。
先ず、地域生活と施設生活において最も大きい違いは、施設生活においては居住費(家賃)が発生しないことだ。グループホームは家賃補助が付いてはいるが、独居生活と同様家賃を支払わなければならない。普通の人たちとこの点は同様である。しかし、障害者支援施設において居住費は徴収されない。終の棲家の役割を果たす特別養護老人ホームは多床型であっても入居者は居住費を支払っている。狭い空間であろうとも、居住空間の対価として金銭を支払っていることは、狭いながらも自分のプライベート空間を確保していることを意味している。まして、個室に対して金銭を払っているのであれば、完全なプライベート空間の権利を購入していることを意味している。賃貸のようなものと考えれば、建物の経年劣化での損傷は、事業者が金銭を負担して修繕更新しなければならないが、それ以外の原因での現状復帰修繕は入居者持ちとなる。もちろん、その負担感はあるとしても、それ以外部屋に何を置こうがどう飾ろうが本人の権利は保障される。当たり前の話であるが、障害者支援施設に居住費や家賃の概念はないということは、利用者の居住空間の権利は保障されていないことになる。だからこそ、重要事項説明書において、部屋の移動等は事業者側の権利なのだ。その理由はなぜなのか?
総合支援法では、(定義)第5条10において、
「施設入所支援」とは、その施設に入所する障害者につき、主として夜間において、入浴、排せつ又は食事の介護その他の主務省令で定める便宜を供与することをいう。
と定めるのみで、居住空間の提供については明確に位置付けてはいない。しかし、居住費の支払いを求めていない合理的理由として考えられるのは、障害者支援施設は通過施設、訓練施設であるという点であろうか。社会復帰していくのが目的で、支援者側が組み立てた一定の訓練や支援を受け、馴れていくうちに退所・地域移行をしていくことが前提となっているということだ。そう考えると、改めて障害者支援施設における「特定障害者特別給付費」(補足給付)の絶妙な役割が浮かび上がってくる。利用者は、必ず1月2.5万~2.8万円可処分所得が残る。つまり、1年で30万~33.6万円の収入を得るようになっている。毎月衣類や自分が好む物を購入したとしても、半分程度は貯蓄として置いておくことが可能だろう。そうすれば、年10万~15万円程度は残すことができる。10年、20年、もしかしたら30年以上施設で暮らしたら、300万~450万円ぐらいは残すことができる。仮に途中地域へ移行したとしても、まとまった金銭を持って地域生活をスタートさせることができることとなる。(若しくは、高齢化して、介護施設に移動したとしても当面貯蓄で皆保険の1割本人負担は支払うことができる)それに比べ、実際グループホームや独居生活をした場合、知的障害者の収支決算はどうなるか?おそらく、貯蓄はできない。おそらく、多くのGH入居者は、障害基礎年金≒家賃+食費+共益費-「特定障害者特別給付費」(定額家賃補助)となるのではないだろうか。さらに、工賃を獲得できても少額。その少額の工賃が本人のささやかな欲求を満たすために使われるのが実態ではないだろうか?若いうちから地域生活を始めた知的障害者は、特に重度知的障害者は、トントンで生活することになり、貯蓄どころではない可能性が出てくる。(グループホーム入居者、独居生活の知的障害者の貯蓄等収入についての統計調査はなされていないようなので、推定的な事しか言えない)早く地域に出ると、出た時点や元気な時点では自由を謳歌できるかもしれないが、体力が落ち老化の影が忍び寄り、生活がおぼつかなくなった時に蓄えのない生活を送る構造になっているのだ。セカンドライフや老後の生活は、(重度)知的障害者にそもそも想定されていないのだ。指導監査の際、「そうなったら生活保護を受けたらよい」と言っていた行政官がいた。聞いた時、なるほどと思ったが、今考えると、本人が頑張っても貯蓄もできない構造になっていることを放置し、今後、生活保護制度を受けても自立できないのに給付だけをあてがうのは詐欺みたいなものである。現時点では、地域生活や老後に対応する貯え(資産形成)をするためには、入所施設にある程度の期間入所する以外確実な選択肢がないのだ。
*ちなみにこの問題は、知的障害者に特有な問題ではないだろうか?身体障害者は、テクノロジーの進歩により、健常者と同等の賃金や売り上げを得ることができるし、精神障害者もサポートや治療を受けながら一般就労を継続することはかなり可能になってきている。なぜなら、どちらも社会生活・経済生活を送るために必要な事理弁識能力はあるからだ。しかし、知的障害の場合そもそもこの事理弁識能力にハンディがあり、健常者と同等のスピードや方法で、物事を理解し、思考し、判断し、応答することに困難性を抱えている。そのため、健常者と同等の賃金や売り上げを得ることは限られた能力の高いグループしかできないのだ。
入所施設のこうした経済構造は、いつから確立したと言えるだろうか?「特定障害者特別給付費」(補足給付)は、障害者自立支援法にて初めて導入されたものである。
措置委託制度の時期は、措置費は以下の項目で支弁されていた。
事務費(職員の人件費その他事務執行に伴う費用)
一般生活費(給食費及び日常生活に必要な経常的諸経費)
重度知的障害者加算(その者の監護及び日常経費等)
強度行動障害特別処遇加算(その者の監護及び日常経費等)
期末一時扶助費(年末における被服等費)
入所者採暖費
就職支度費
葬祭費
措置費=事務費+一般生活費+(重度知的障害者加算)+(強度行動障害特別処遇加算)+(期末一時扶助費+入所者採暖費)+(就職支度費)+(葬祭費)
で計上された単価×定員で計算されていた。
費用徴収は、入所者が属する世帯の所得階層区分できめ細かく定められていた。
支援費制度では、施設訓練等支援費と居宅生活支援費に大別された。
障害程度を区分A・B・Cの3段階で格差をつけ、
入所時特別支援加算
退所時特別支援加算
強度行動障害支援加算
自活訓練支援加算
と特別な支援を提供する場合に加算をつけることとなった。
費用徴収は、制度変更による激変がないように、引き続き入所者が属する世帯の所得階層区分を援用する形を採用した。
このブログを読んでいる方なら、もともと60年代は中軽度者の社会的更生・訓練が焦眉の課題であり、入所更生施設において多くの作業を日課に取り込み、集団生活スタイルをとったのは、その問題に対応するためであった。当時の予算がなかったため、重度者も抱きあわせで、「混合処遇」の名のもとに入所を推進したが、この時期はまだ重度者は少数派だったから可能だったのだ。しかし、70‐80年代、重度者医療制度が整備され、重度者の寿命が延び、軽度者と比率が逆転したにもかかわらず、施設や支援構造も意識も相変わらず中軽度者対応のままであることが、入所施設の危機を招いているのだ。
措置費・支援費制度には、どこにも、2.5万~2.8万円の所得補償を行う制度はないのが見て取れる。自立支援法以降に、明らかに入所者が訓練を経て地域へ移行する確実な金銭的補償を補填するために、補足給付を導入したと推定されるのである。ある意味、自立支援法は、入所施設の役割を60年代まで巻き戻し、より合理的に地域移行する仕組みを実現したともいえる。補足給付のこうした側面は、どこにも語られていないし、入所施設の在り方を考えるうえで、識者たちは補足給付をどう取り扱うつもりなのだろうか?また、在宅とのバランスというならば、在宅障害者は早くから地域生活を送るならば、補足給付の恩恵を受けないので、一生低所得者層に固定され、老後の資金もままならず、障害福祉サービスにしがみつくしかない状況に置かれているのだ。それで、意思決定支援、望むべき人生を応援するとか言っても、元気なうちはいいだろうが、生活がおぼつかなくなった段階でだれが彼らの人生に責任を持つのだろう。
自立支援法以降、「3障害統合」ということで、身体障害・精神障害・知的障害・発達障害・難病を一つの障害者というレッテルで塗りつぶし、政策が進んでいく。しかし、事理弁識能力という軸で見てみると、身体障害・精神障害・発達障害・難病と知的障害では直面する課題に大きな溝がある。それなのに、「障害のある人の暮らしのあり方」とひとくくりにして知的障害児者の人生を語るのは本当にやめてほしいのだ。まして、これまで知的障害福祉を先頭で担ってきた人たちのそんな行動や言動を見るにつけ、深い絶望感にとらわれてしまうのだ。