これまで、我が国の児童虐待防止システムについて戦前から現在に至るまでの歴史を連続的に振り返ってきた。連続的な見方をすることで、まず見えてくるのは

  1. 我が国の児童虐待防止システムの骨格は、基本的には、都道府県知事に代表される広域自治体の首長が市町村長、警察組織や教育機関、民生委員・児童委員の協力を得ながら、被虐待児道の発見保護を目指すシステムである。
  2. しかし、戦後の混乱期の対応から、少年犯罪を防止する治安維持的な目的をもって急ごしらえで作られた児童相談所に「委託」・権限集中という形で、本来のシステムが児童相談所という「専門機関」の下に運営されることとなった。
  3. それによって、戦前に形成された児童虐待防止システムは、非行少年などの「保護者に監護させることが不適当な児童」の更生保護システムに取って代わられることとなり、戦後の様々な民主的改革の余波もあり、これまで連携協力してきた各機関(特に警察)は2次的な立場に甘んじることとなり、児童相談所に全てが任される(厳しく言えば無責任な)状態になった。

1から導き出されるあるべき児童虐待防止システムは、警察・教育機関、民生委員・児童委員が主体的に被虐待児の発見保護や虐待をしている養親者の改心を引き出すよう努めるシステムである。児童虐待の問題は、優れて地域の子育て、児童の人権を守っていく地域作りに直結している。戦前のシステムにおいて、地方長官が頂点に立ったのは、国策のもと派遣され、地方を治め、指揮監督するという権限を持つからであった。「地方分権」や「分権型社会」を謳い、国民主権、住民自治に転換した現在、地域は基礎自治体(市町村)を単位に運営されることが目指されている。従って、広域自治体(都道府県)の首長はさることながら、基礎自治体の首長(市町村長)や首長と歩を一にして自治体の運営を行う議会こそが児童虐待防止に第一義的な責任を負い、イニシアティブをとることが必然的に求められている筈だ。従って、広域自治体(都道府県)は、市町村で完結しない広域的行政ニーズや市町村で担うと著しく非効率となる高度技術や専門性を必要とする行政ニーズを担うことが基本で、基礎自治体の底支えの役割であるべきだ。児童虐待防止という観点から言えば、所在を転々として果ては他府県に転出しながら虐待を続ける悪質な親を捕まえ、被虐待児の命を保護するためには、県内をカバーし全国の組織連携が可能な都道府県知事が所轄する都道府県公安委員会の管理下で都道府県警察が底支えするのは十分合理性のあることだ。また、こうした悪質な親を生み出さない、逃がさないようにする対策を検討する意味で、首長の全国組織(全国知事会、全国市長会等)において児童虐待防止ネットワークについて議論されるべきだ。

政府は、実際平成16年度(2004年)児童福祉法改正において以下のように整備を行った。

[1]   地方公共団体は、要保護児童の適切な保護を図るため、関係機関等により構成され、要保護児童及びその保護者(以下「要保護児童等」という。)に関する情報の交換や支援内容の協議を行う要保護児童対策地域協議会(以下「地域協議会」という。)を置くことができる。

[2]   地域協議会を設置した地方公共団体の長は、地域協議会を構成する関係機関等のうちから、地域協議会の運営の中核となり、要保護児童等に対する支援の実施状況の把握や関係機関等との連絡調整を行う要保護児童対策調整機関を指定する。

[3]   地域協議会を構成する関係機関等に対し守秘義務を課すとともに、地域協議会は、要保護児童等に関する情報の交換や支援内容の協議を行うため必要があると認めるときは、関係機関等に対して資料又は情報の提供、意見の開陳その他必要な協力を求めることができる。

(3)  こうした改正により、

[1]   関係機関のはざまで適切な支援が行われないといった事例の防止や、

[2]   医師や地方公務員など、守秘義務が存在すること等から個人情報の提供に躊躇があった関係者からの積極的な情報提供

が図られ、要保護児童の適切な保護に資することが期待される。

特に、地域協議会を構成する関係機関等に守秘義務が課せられたことにより、民間団体をはじめ、法律上の守秘義務が課せられていなかった関係機関等の積極的な参加と、積極的な情報交換や連携が期待されるところである。

(4)  なお、平成16年児童福祉法改正法においては、地域協議会の設置は義務付けられていないが、こうした関係機関等の連携による取組が要保護児童への対応に効果的であることから、その法定化等の措置が講じられたものである。また、参議院厚生労働委員会の附帯決議においても、「全市町村における要保護児童対策地域協議会の速やかな設置を目指す」こととされているところである。これらの経緯を踏まえ、市町村における地域協議会の設置促進と活動内容の充実に向けた支援に努めるものとする。

2. 要保護児童対策地域協議会の意義

地域協議会においては、地域の関係機関等が子どもやその家庭に関する情報や考え方を共有し、適切な連携の下で対応していくこととなるため、以下のような利点がある。

[1]   要保護児童等を早期に発見することができる。

[2]   要保護児童等に対し、迅速に支援を開始することができる。

[3]   各関係機関等が連携を取り合うことで情報の共有化が図られる。

[4]   情報の共有化を通じて、それぞれの関係機関等の間で、それぞれの役割分担について共通の理解を得ることができる。

[5]   関係機関等の役割分担を通じて、それぞれの機関が責任をもって関わることのできる体制づくりができる。

[6]   情報の共有化を通じて、関係機関等が同一の認識の下に、役割分担しながら支援を行うため、支援を受ける家庭にとってより良い支援が受けられやすくなる。

[7]   関係機関等が分担をしあって個別の事例に関わることで、それぞれの機関の限界や大変さを分かち合うことができる。

3. 対象児童

地域協議会の対象児童は、児福法第6条の3に規定する「要保護児童(保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童)」であり、虐待を受けた子どもに限られず、非行児童なども含まれる。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv11/05-01.html より引用)

これにより、市町村は児童虐待防止のために要保護児童対策地域協議会(要対協)の設置努力を求められることになり、運営を調整する調整機関の設置が求められた。(正式には平成20年度2008年より)

要対協設置は努力義務であるのも関わらず、全国の市町村での設置率は、99.5%とほとんどの市町村にて設置された。

児童虐待防止において期待されているのは、先ず関係者が一堂に会する協議会であるという点であろう。

要保護児童対策地域協議会設置・運営指針(厚生労働省)において、要対協の構成員について以下のように示されている。

【児童福祉関係】

・  市町村の児童福祉、母子保健等の担当部局

・  児童相談所

・  福祉事務所(家庭児童相談室)

・  保育所(地域子育て支援センター)

・  児童養護施設等の児童福祉施設

・  児童家庭支援センター

・  里親

・  児童館

・  民生・児童委員協議会、主任児童委員、民生・児童委員

・  社会福祉士

・  社会福祉協議会

【保健医療関係】

・  市町村保健センター

・  保健所

・  地区医師会、地区歯科医師会、地区看護協会

・  医療機関

・  医師、歯科医師、保健師、助産師、看護師

・  精神保健福祉士

・  カウンセラー(臨床心理士等)

【教育関係】

・  教育委員会

・  幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾(ろう)学校、養護学校等の学校

【警察・司法関係】

・  警察(警視庁及び道府県警察本部・警察署)

・  弁護士会、弁護士

【人権擁護関係】

・  法務局

・  人権擁護委員

【配偶者からの暴力関係】

・  配偶者暴力相談センター等配偶者からの暴力に対応している機関

【その他】

・  NPO

・  ボランティア

・  民間団体

これら構成員の代表者が参加する代表者会議、実務者が参加する実務者会議、個別の事例について担当者レベルで適時検討する個別ケース検討会議を行うことが期待され、調整機関がこの構成員の参加や関与のあり方を調整していくと推察される。と同時にこれほど多くの関与者の出席を調整する作業の手間や労力も多大なものと思われる。

これほどの手間と労力をかけて、上記の「意義」に書かれている効果を要対協は発揮することができたのか?

「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」第9次報告(2013年 厚生労働省 ネット公開終了)では、要対協が関わっていながら虐待死したケースは、全死亡例54例に対して14例、25.9%であり、厚生労働省は、「要対協の有効性について疑義を抱かせるに十分値する」現状であった。

(論文「要保護児童対策地域協議会における今日的課題(報告)」)

「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」年次報告は、こども家庭庁に引き継がれ、現在第19次報告(令和5年9月)までネット上に公開されている。その結果によれば、心中以外の虐待死事例の約7割が要対協において検討がなされていない。逆に言えば、関与していても虐待死したケースは15事例で、全事例49例と比較すると30.6%であることが明らかにされている。(ちなみに、「心中による虐待死」を含めても、関与したにもかかわらず死亡した事例は、27.3%であった。)

*ちなみに厚生労働省による最後の年次報告である第18次報告(令和4年9月)では

「心中以外の(虐待死)」は、全例632例に対して、要対協の関与なし527例83.4% 関与あり105例で16.6%。「心中(虐待死)(未遂を含む)」は全例373件に対して、関与なし336例90.1% 関与あり33例8.8%)となり、第19次報告と乖離があるが、いずれにせよ、虐待死を引き起こすまでのケースについて要対協が主導権を発揮し得ていないのが実態である。

どっちにせよ、2013年~2023年の10年間虐待防止の切り札と思われた要対協は様々な支援を受けながらも効果を発揮していない現状が明らかであろう。

政府・国会の様々な児童虐待に関する取り組みの何が問題なのだろうか?厚生労働省は、平成17年度(2005年)より、「児童虐待防止対策支援事業」について、実施要綱を定め、都道府県・市町村への支援を行ってきた。実施要綱の「目的」は以下の通り

児童虐待防止対策支援事業実施要綱

第1 目的

 児童相談所における虐待相談件数の増加とともに、その相談内容も困難な事例が増加していることや医学的治療が必要となるケースが増えるなど、これまでの児童相談所の体制だけでは十分な対応ができない状況がある。 また、児童相談所には市町村(指定都市、児童相談所設置市を除き、特別区を含む。 以下同じ。)の相談窓口がその機能を充分果たせるよう後方支援する役割があることから、児童相談所の専門性の確保・向上等を図り、相談機能を強化することが求められている。 さらに、平成28年の児童福祉法改正において、市町村は、子どもが心身ともに健やかに育成されるよう、基礎的な地方公共団体として、子ども及び妊産婦の福祉に関し、必要な実情の把握に努め、情報の提供を行い、家庭その他からの相談に応じ、調査及び指導を行うとともに、その他の必要な支援に係る業務を適切に行わなければならないことが明確化されたことから、子どもやその保護者にとって最も身近な場所である市町村における福祉に関する支援等を行う体制強化が求められている。 このため、児童虐待防止対策支援事業は、児童相談所が地域の医療、法律その他の 専門機関や職種の協力を得て、高度で専門的な判断が必要となるケースへの対応が可能となる体制を確保するとともに、子どもの安全確認体制の強化、市町村を中心とした在宅支援の強化及び児童虐待の防止に資する広報啓発等を実施するほか、市町村における児童の安全確認のための体制整備及び児童虐待に対応する職員等の資質向上等を実施し、児童虐待に関する相談・対応機能を強化することにより、子どもの福祉の向上を図ることを目的とする。

主だった事業主体は、都道府県・指定都市・児童相談所設置市であり、事業内容によっては市町村も実施主体となっている。

「児童相談所の専門性の確保・向上等を図り、相談機能を強化する」「児童相談所が地域の医療、法律その他の 専門機関や職種の協力を得て、高度で専門的な判断が必要となるケースへの対応が可能となる体制を確保する」とあくまで児童相談所が主体で児童虐待防止を図ることが維持されている。本来の責任主体である基礎自治体である市町村は、「子どもの安全確認体制の強化」及びその「体制整備及び児童虐待に対応する職員等の資質向上」「在宅支援の強化及び児童虐待の防止に資する広報啓発」が謳われている。この中で重要なのは、「子どもの安全確認体制の強化」及びその「体制整備及び児童虐待に対応する職員等の資質向上」だ。「未就園児等全戸訪問事業」(乳幼児健診未受診者、未就園、不就学等で、福祉サービス等を利用していないなど関係機関が状況確認をできていない児童をリストアップし、当該児童を対象とした家庭訪問を実施し、養育環境の把握及び目視による児童の状況確認する)「児童の安全確認等のための体制強化事業」(児童相談所又は市町村において、児童虐待の通告を受けた際の子どもの安全確認等の体制を強化する)が柱で、前者は「児童虐待防止対策の抜本的強化について」(平成31年3月1 9日 児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議)で特に位置づけられ、令和3年度の調査結果によると、 令和3年6月1日時点の確認対象児童29,166人のうち、状況確認ができた児童は29,156人(99.97%)、状況確認ができず調査を継続している児童は10人 (0.03%)。但し、同調査は安全確認を目的とした調査であり、未就園児であっても関係機関(医療機関等)の受診歴等が確認できればその後の調査対象とはならない。未就園等の地域で孤立しているおそれのあるこどもや家庭の実態は、その背景にある状況、地域間の差異等も含めまだ十分に把握されていない状況であると結論づけられている。(未就園児等の把握、支援のためのアウトリーチの在り方に関する調査研究 令和5年3月 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所 こども家庭庁「未就園児等の把握、支援のためのアウトリーチの在り方に関する調査研究第1回検討委員会」事務局資料 HPで閲覧可能)その有効性は検討段階に入ったばかりであり、その効果や改善はまだこれからだ。後者に至っては、現段階では安全確認等対応職員は警察官OB等の非常勤職員にすぎず、それも通報後に動き出す体制だ。以前の投稿で、児童虐待防止の鍵は、結局養親者に「手をあげることを思い止まらす」「一線を越えさせない」ことと書いた。通報という形で顕在する前に隠ぺいされた行為を見つけ出すことが肝要なのだ。一貫して、警察機関を児童虐待防止において二次的、脇役的な立場に置き続け、市町村が十分な主導権を発揮して防止・予防をしていく体制にはなっていないのが見て取れる。「児童虐待の防止に資する広報啓発」についても「地域における児童虐待の通告先等」が情報提供の内容と上げられているだけだ。それでは、子育てに取り組む養親者の中に内面的な規範を生み出すことは出来ず、手探りで虐待通報することだけが増えるのは目に見ていることではないだろうか。ある程度体系的な「子育て・虐待予防講習」が市町村レベルで取り組まれた方がより効果的ではないだろうか。(それこそ、児童相談所が内容を作成し、市町村の活動を支えるほうが、地方分権の理念に合致もしているのではないだろうか)

児童虐待防止の第一義的責任はだれが負うべきか。

「児童虐待防止対策支援事業」に見られる通り、政府の描いているシステムは、相変わらず児童相談所というサブシステムによって解決を図ろうとするもので、戦前に形成されたメインシステムをさらに基礎自治体における住民自治や民主主義へと高める形で解決を図るものではない。こうしたことが、基礎自治体に解決責任を求めない事にもつながっている。

一般社団法人 地方自治研究機構が取りまとめた児童虐待に関する条例に関するデータがある。

( http://www.rilg.or.jp/htdocs/img/reiki/013_childabuse.htm

皆さんは次の数字をどのように受け止めるであろうか?

47都道府県の内、児童虐待を防ぐ目的での条例を制定しているのは16都府県で議員提案は10都府県

20政令指定都市の内、児童虐待を防ぐ目的での条例を制定しているのは9都市で議員提案は9都市

1,718市町村の内、児童虐待を防ぐ目的での条例を制定しているのは25市町村都市で議員提案は2市

(HPの解説では包括的な条例もあるので、一概に上記の数字が全てではない)

警察を条例に関係機関と明記したり、関与を明記しているのが、9都道府県、6指定都市 9市町村。

要対協については、13都道府県 4指定都市 6市町村が実際設置しているのも関わらず条例の中では位置づけられていない。

児童虐待防止に関する条例がほとんどの市町村で制定されていない現状は、国レベルで児童虐待防止法があるとはいえ、地方自治・住民自治の問題、地域の課題として住民の代表である議会において議論されていないということを意味している。制定されている自治体においても、警察関与や要対協について明快でないということも住民の代表たる議会は所詮児童虐待の問題は、地域も問題として真剣に受け止めていないに等しいと感じてしまう。本来は、どの自治体も何等かの数値目標を掲げ、議会で討議し決定し、公金を投入し、その結果を再度議会で検証すべきなのだ。(もしくは、警察や教育機関の責任者を入れた責任を持った市町村長の直轄機関が虐待防止に関わる一切の活動を指揮し、議会の監視を受ける方式)児童虐待の問題は所詮雲の上の児童相談所や国任せ、自分たちの地域の問題と感じてもいないのにどうして児童虐待、不適切な子育てを改善できるのだろう?口では子供の人権を守ると言いながら、誰も責任を果たしていない現実にいい加減向き合う必要性があるのではないか。

*少し脇道にそれるが、埼玉県だけが「埼玉県虐待禁止条例」と強い表題をつけている。先日公園で一人遊ばせるのも「虐待」と認定しようとして、国民的に批判され撤回したが、国も含めて虐待防止を掲げる中、虐待禁止という表題をつける県議の方々の考え方は興味深い。県議の方々に何故先人たちも含めて児童虐待防止とつけたのか意味をかみしめてもらいたい。

最後に、「児童虐待の防止等に関する法律」を児童福祉法から独立して制定する国会議論が行われている際、厚生省は児童福祉法で対応できる旨を繰り返し述べていた。その答弁の当否はさておき、厚生省が児童虐待について全くサボっていたわけではない例として、図書館で書籍検索をしていたら、「子ども虐待防止の手引き」(厚生省児童家庭局企画課監修 子ども虐待防止の手引き編集委員会・編 平成9年3月31日刊)が見つかった。巻頭に「『手引き』発刊によせて」として厚生省児童家庭局長 横田吉男が文章を寄稿している。興味深いのは、2なぜ虐待はおこるのか で発生要因を分析している部分。①親の成育歴(虐待の連鎖)②家庭の状況(一方の支配的な夫婦関係 若くして結婚し子育てのストレス等)③社会方の孤立④子ども自身の要因(慢性疾患、障害、なだめにくい、こだわりの強い子)⑤親とその子どもとの関係と現在論点になるような点がすでに提出されている。さらに、3虐待に気づくために では、相談に来た時やそれぞれの場(家庭、地域、乳幼児健康診査、電話相談等)での気づきポイントが具体的に書かれている。児童虐待の分類については、厚生省報告例記入要領では、身体的暴行、保護の怠慢ないし拒否(ネグレクト)、性的暴行、心理的虐待(極端な心理的外傷を与えたと思われる行為)、登校禁止(家への閉じ込め)と分類され、平成8年度「全国児童相談所における家庭内虐待調査」における分類(全国児童相談所長会実施)では、身体的虐待、不適切な保護ないし拒否、性的虐待、心理的虐待とほぼ「児童虐待の防止等に関する法律」第2条で定義されている虐待類型が提示されている。このことから、「児童虐待の防止等に関する法律」で初めて児童虐待の類型が定義された訳ではないし、それまで全く無策であったわけではないことは強調しておきたい。むしろ、例示されている内容は注目しておく必要がある。例えば、性的虐待の例として、性行為の強要はともかく子どもに性器を露出する、ポルノビデオを見せると具体的に例示している。また、心理的虐待として、終始非難、拒否、無視、脅迫、差別などにより心身の発達に問題を生じさせることまたはその怖れの大きい状態と定義し、具体例として、ほめることをせず、厭味ばかり言う(ことばによる暴力、無視)、盗みや万引を強要する、宗教を強要することが挙げられている。特に「宗教の強要」は当時明快に心理的虐待と規定されていたにもかかわらず、最近の宗教2世問題をマスコミ等は難しい問題とあたかもこれまで考え来られてこなかった問題であるかのように扱う論調も見られる。識者やマスコミが過去の事実を切り捨てて扱っているように思えてならない。(誰か経緯を詳しく調べてほしい)児童虐待等社会福祉に関する問題について、自分の目で過去・歴史も含めて事実を確認する必要性を痛切に感じている。(ちなみに、紹介した手引きの内容は、図書館検索をしたところ、愛知県の岡崎市立中央図書館にのみ所収されていたことが判明し、取り寄せて確認したものである。)

本当は、クリスマスに間に合わせたかった内容だったが、時間がなかなか取れず一日遅れてしまいました。世界も国内も子どもの命が軽んじられている現実をどうしたらいいのかため息が出るばかりだ。来年はいい年であってほしいと思う。一日遅れではあるが、メリークリスマス。

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