知的障害者は、”purposeful expression of feelings”の原則から考えると、言語能力の発達程度によっては、知的なハンディにより言語化の能力や言語化することによってポジティブに自らを向けていく事を選択してもらう事はなかなか難しいと思われる。(特に重度知的障害)また、自分の感情を表現・理解することが難しく、そこは支援者がまさに”The controlled emotional involvement”の原則で読み解いていく、そして支援者が代わりに表現していくしかない。前々回の投稿で「ここに代弁者としての支援者に対するケースワークをしていく必要性が生じてくる。これがスーパービジョンに繋がっていくのだ。」とさらっと書いたが、ソーシャルワークの”アプローチ”について少しおさらいをしてみよう。
会話・対話を通じて課題解決への動機付けや能力を高めるという基本コンセプトは、「心理社会的アプローチ」と言われるもので、機能的アプローチ・問題解決アプローチ・課題中心アプローチ・危機介入アプローチ・エンパワメントアプローチ・ナラティブアプローチ・実存主義アプローチ・フェミニストアプローチ・解決志向アプローチ等々の原型と言える古典的なアプローチ。背景理論としては、精神分析理論・自我心理学・合理的問題解決論・役割理論・社会構成主義・プラグマティズムがあるとは言われている。だから、会話・対話、それによる心の整理を着けていく能力に制限があるクライアントには、この古典的なアプローチが理論的には通用しない。
そこで、望ましくない行動(問題行動)を測定可能な「行動」の変容を図ることで解決するアプローチとしての行動変容アプローチが、60年代後半から取り上げられるようになる。背景理論は、学習理論。学習理論では、学習とは生活体の経験に基づいて生じる比較的永続的な行動の変容であり、生活体が行う行動とは、試行錯誤によって、生活体に満足をもたらす行動以外は排除され、満足を得る行動が残った結果であるとする。この考え方の利点は、(問題)行動の外形がクライアントが環境との相互作用で満足した結果の適応形態であるとみなして、クライアントと環境の関係性を変更すると満足度や適応度が変化し、結果新たな満足・適応に到達するために行動が変容する可能性があることを示唆してくれる点である。強度行動障害の支援で使用される応用行動分析(ABA)もこの流れをくむアプローチだ。
一般的な言語能力を持っているクライアントならば、現時点で、あることがニーズと気づかなかったり、解決にあきらめ感しか持っていなかったとしても、”purposeful expression of feelings”の原則でワーカーがクライアントの感情に応答していく中で、会話・対話を通じて課題解決への動機付けや能力を高めるは理論的に可能だが、知的障害者は言語能力の程度によっては、このアプローチが致命的に通用しない。つまり、ワーカーから、世間から見てニーズでも、ニーズと自覚しない、解決に合理的な方向があって前向きに取り組めば解決するとワーカーから見ても、本人はそもそも解決をしようという「意欲」のレベルにすら到達していない、という客観的なニーズ・解決策と本人の認知・意欲に埋めがたいギャップが生じる。ここに、ワーカーの立場の二面性が生じる。つまり、クライアントの代わりに能力に制限がないあるべき姿を体現し、実現しようと考えるワーカーの立場とクライアントに何とかソーシャルワーク的な視点で援助関係を作り、クライアントに自らの力で解決してもらっていこうと奮闘するワーカーの立場の乖離が生じる。後者の立場は、かなりの忍耐力と根気を求められるのは、支援をしている人なら実感できるだろう。心理的な葛藤、迷い、消耗感、反感等様々なネガティブな感情が生じるのも想像難くない。また、クライアントの言語化・表出できないまたは表出しても微弱なサインやニーズを受け止めて、本人も含めて誰にでも認知されるようすることも必要だ。例えて言うなら、クライアント(利用者)の思いを拾って増幅するアンプのような存在にならなければならない。その上でクライアントに成り代わって、ワーカーが行動や計画を実行する。ここにパラレルプロセスが生じることを想像しよう。クライアント(利用者)を支援する支援者(ワーカー)の関係は、支援者(ワーカー)を支援する上位支援者(スーパーバイザー)の関係とパラレルにリンクする。利用者支援をする支援者の支援=支援者支援が組織的に行われる必要がある。この一つの手段が、スーパービジョンなのだ。利用者支援において、ケースワークやバイステックが用いられるならば、パラレルに支援者支援においてもケースワークやバイステックが用いられる。
前々回の投稿で、バイステックの原理を便宜上、下のように訳しておいた。
(直訳・Lookeron訳)
個別化
目的を持った感情表現
コントロールされた情緒的関与
受け入れ
裁かない態度
クライアントの自己決定
機密保持
”Acceptance”を「受け入れ」とも訳し、前回では「事実・真実を受け入れる」と訳し、教科書通りの「受容」という言葉を使うのを避けてきた。よく「受容」という言葉をめぐって、「なんでも受け入れることですか?(利用者が不適切な行動をしているのに…)」と非難がましい質問を受けるからだ。
バイステックの原文に当たってみよう。バイステックはその定義を次のようにしている。
Acceptance is a principle of action wherein the caseworker perceives and deals with the client as he really is, including his strengths and weaknesses, his congenial and uncongenial qualities, his positive and negative feelings, his constructive and destructive attitudes and behavior, maintaining all the while a sense of the client’s innate dignity and personal worth.
Acceptance does not mean approval of deviant attitudes or behavior. The object of acceptance is not “the good” but “the real.” The object of acceptance is pertinent reality.
The purpose of acceptance is therapeutic: to aid the caseworker in understanding the client as he really is, thus making casework more effective; and to help the client free himself from undesirable defenses, so that he feels safe to reveal himself and look at himself as he really is, and thus to deal with his problem and himself in a more realistic way.
(Lookeron訳)
”Acceptance”とは、ケースワーカーがクライアントをありのままに理解し、取り扱う際の行動原理である。クライアントのストレングスや弱点、気心のあった特質や合わない特質、ポジティブな感情やネガティブな感情、建設的な態度・行為と非建設的な態度と行為を含みながら、ずっとクライアントの生来の尊厳と個の価値を維持していくことである。
”Acceptance”は、逸脱した態度や行為の是認を意味するものではない。”Acceptance”の対象は、”良いもの”ではなく”本当のもの”である。
(即ち)「受容」の対象は、適切な真実である。
”Acceptance”の目的は、治療的なものである。ケースワーカーに対しては、クライアントをありのままに理解することで、ケースワークをより効果的にすることの手助けをし、クライアントに対しては、自分自身を明らかにして、ありのままの自分自身を見ることにより、望ましくない防衛機制から解放される安心感を感じる。そうすることでより現実的な方法で自身の問題を処理することに安心を感じるのである。
「受容」のポイントは、何でも肯定する(もしくは肯定しなければならない)という意味ではなく、クライアントの”リアル”を受け入れることである。
なぜそのような行為が必要なのかと言えば、バイステックはクライアントのニーズから解きおこしている。
His ambivalence extends to the caseworker: he realizes that he must reveal some of his shortcomings to the caseworker in order to be helped, while at the same time he fears that the case- worker, seeing him as he is, may think less of him as a person. He fears disapproval. This fear may cause any one of a number of reactions, depending on the nature of the problem and the personality of the client. He feels the insecurity of approaching someone he has never met; he may fear that his request for help will be refused; he may feel resentment against the conditions that make it necessary for him to seek help; and he may fear the self-involvement with the caseworker. Therefore he constructs defenses, behind which he tries to hide a part of himself. He feels that it is unsafe for him to manifest some things which he knows need to be manifested because they are pertinent to his problem. He has buried some things so deeply that he is aware of them only vaguely;the fear of what is hidden may be worse than the reality itself.
(直訳・Lookeron訳)
クライアントの相反する感情はケースワーカーにも及ぶ。クライアントは、助けてもらうためには自分の欠点をいくつかケースワーカーに明らかにしなければならない、と同時に、ありのままの自分を見て、ケースワーカーが自分のことを一人の人間として、あまり考えないかもしれないとも認識している。 クライアントは承認されないことを恐れている。 この恐怖は、問題の性質やクライアントの人間性に応じて、さまざまな反応のうちのどれでも引き起こす可能性がある。 クライアントは会ったことのない人に近づくことに不安を感じる。 クライアントは助けを求めても拒否されるのではないかと恐れるかもしれない。 クライアントは助けを求めなければならない状況に対して憤りを感じるかもしれない。 そしてケースワーカーと自分が関わることを恐れるかもしれない。 したがって、クライアントは防御策を構築し、その背後に自分自身の一部を隠そうとするかもしれない。 クライアントは、自分の問題に関連するため、明らかにする必要があるとわかっているいくつかのことを明らかにするのは、自分にとって危険であると感じている。 クライアントはいくつかのことをあまりにも深く隠ぺい抑圧してしまい、漠然としか自覚していない。隠ぺいされたものに対する恐怖は、現実そのものよりも悪いかもしれない。
援助を求めるクライアントには、様々な心理的な規制(葛藤、不安、抑圧)が沸き起こるため、クライアント自身が自身の置かれている状況を客観的に認識し、前向きに問題に立ち向かっていくことができなくなっている。その解決策は、前々回の投稿の”purposeful expression of feelings””controlled emotional involvement”によって、クライアントが自分で課題を整理するようにワーカーが励まし促すのであるが、そのためにも様々な心理的規制を引き起こさないようにすることが不可欠となる。”Acceptance”とはそのためにも必要なケースワーカーの態度なのだ。
バイステックは、”Acceptance”の章で”obstacles to acceptance”として、” acceptance”の障壁となるものを8つに分類している。
1.Insufficient knowlege of patterns of human behavior
2.Nonacceptance of something in self
3.Imputing to the client one’sown feelings
4.Biases and prejudices
5.Unwarranted reassurances
6.Confusion between acceptance and approval
7.Loss of respect for the client
8.Overidentification
(Lookeron訳)
1.人間の行動パターンについて不十分な知識
2.自分の中にある何かを受け入れられないこと
3.自分の感情をクライアントに押し付ける
4.偏見と偏見
5.保障のない安心感
6.受容と承認の混同
7.クライアントに対する敬意の喪失
8.過剰に自分と重ね合わせること
その中の”Confusion between acceptance and approval”は正に「受容」に対する誤解を解く文章だ。
(THE CASEWORK RELATIONSHIPの出版年が1957年だから、70年近く前からこの誤解は解消されていないことになる)
Confusion between acceptance and approval.
…The individual social worker and the profession as a whole need to be clear about what they approve and disapprove. Social workers, in order to be effective in helping people, must ally themselves with the civil law, with the moral law, and with social and economic standards which promote decency and dignity in human affairs. Clarity in this area contributes to professional maturity.
The role of the caseworker is to help the client proceed from a situation which is undesirable and unacceptable to a situation which is desirable and acceptable. Therefore some standard of right and wrong, of good and bad, is implicit in every case. The violation of the moral law by the unmarried mother, the violation of civil law by the parolee, the emotional rejection of her child by a mother seeking help in a child-guidance clinic, the breakup of a family through divorce, the fears which prevent the person from employment-all of these are undesirable. It is therefore ridiculous to think that the caseworker’s duty is to approve of everything about the client. The client comes for help because he is unhappy about something in his life;he does not approve of everything in himself.
The caseworker must nevertheless accept the client and everything about the client that is pertinent to the helping process. The caseworker must accept even those elements of which he disapproves. He accepts the unmarried mother’s verbalization about her ambivalence about sexual behavior, in the technical sense of acceptance, which means that her ambivalence is real, is pertinent to her problem, and is discussed with a therapeutic purpose. He accepts the parolee’s negative attitudes to law, to law enforcement officers, to his past imprisonment, and to the parole regulations. Even though the caseworker is duty-bound to be allied with the law, he accepts the parolee’s attitudes because they are a part of the problem and need to be aired out, clarified, and straightened out. He accepts the verbal protestations of the rejecting mother to the effect that she is a good mother and not at all responsible for her child’s problems, because she needs help in gaining insight into her unsatisfactory relationship with her child.
Acceptance, therefore, is a technical term. The object of acceptance is reality; the caseworker perceives and deals with the client as he is in reality. The client’s congenial and uncongenial qualities, his positive and negative feelings, his acceptable and unacceptable attitudes and behavior, need to be perceived and dealt with both by the client and the caseworker. Otherwise, casework becomes an unreal, make-believe situation. As the physician accepts every pertinent bit of information about the patient’s physical health, the caseworker in like manner accepts everything pertinent about the client’s psychosocial health.
受容と承認の混同(Lookeron仮訳)
(略) 個々のソーシャルワーカーと専門職全体が、何を承認し、何をしないのかを明確にする必要がある。 ソーシャルワーカーが効果的に人々を助けるためには、市民法、道徳法、そして人間としての礼儀と尊厳を促進する社会的および経済的基準と連携しなければならない。 この分野の明確さは、専門的な成熟に貢献する。
ケースワーカーの役割は、クライアントが望ましくない、受け入れられない状況から、望ましい、受け入れられる状況に移行できるよう支援することである。 したがって、正邪、善悪に関する何らかの基準は、あらゆるケースに内在している。 未婚の母親による道徳法違反、仮釈放者による市民法違反、児童相談所に助けを求める母親による子供への情緒的な拒絶、離婚による家族の崩壊、その人を雇用することを妨害する恐怖、これらはすべて望ましくない。 したがって、ケースワーカーの義務として依頼者のすべてを承認することであると考えるのはばかげている。 クライアントは、自分の人生の何かについて幸せでないため、助けを求めてやって来る。クライアントは自分自身のすべてを承認しているわけでないからだ。
それにもかかわらず、ケースワーカーはクライアント及び支援援助の過程に関連するすべてのことを受容しなければならない(受け入れなければならない)。 ケースワーカーは、自分が是認できない要素であっても受容しなければならない(受け入れなければならない)。 クライアントは、未婚の母親の性的行為についての愛憎相反に満ちた言動を、受容という専門的な意味で、受容する(受け入れる)。それは、彼女の愛憎相反が現実であり、彼女の問題に関連しており、治療目的で議論されることを意味する。 クライアントは、仮釈放者の、法律・法執行官・過去の投獄および仮釈放規制に対する否定的な態度を受容する(受け入れる)。 ケースワーカーには法を遵守する義務があるにもかかわらず、仮釈放者の態度は問題の一部であり、公表し、明確にし、質さなければならないため、受容する(受け入れる)。 クライアントは、(養育)拒否をする母親が、良い母親になり、子供の問題について全く責任を負わないという意味で、口頭での抗議を受け入る(受容する)。なぜなら彼女は子供と関係に満足できていないことへの洞察を得る援助を必要としているからである。
受容とはそれゆえに、専門的な用語である。 受容の対象は現実(リアル)である。 ケースワーカーはクライアントを現実のありのままに認識し、対応する。 クライアントの相性の良い性質とそうでない性質、ポジティブな感情とネガティブな感情、受け入れられる態度と行為 と受け入れられない態度と行為に対して、クライアントもケースワーカーも両方ともが認識し、対処する必要がある。 そうしないと、ケースワークが非現実的な、ごっこ遊びのような状況になってしまう。 医師が患者の身体的健康に関するあらゆる関連情報を受容するのと同様に、ケースワーカーもクライアントの心理社会的健康に関するあらゆる関連情報を受容する。
「ケースワーカーの役割は、クライアントが望ましくない、受け入れられない状況から、望ましい、受け入れられる状況に移行できるよう支援することである。 」これは、生活支援の大きな目標として明快だ。バイステックは、こう規定することですでにここに価値判断(道徳法、市民法等法的に規定されたものを基準に上げていることに注意!)があることを示唆している。そして、「受容」とは、クライアントのリアル(”相性の良い性質とそうでない性質、ポジティブな感情とネガティブな感情、受け入れられる態度と行為 と受け入れられない態度と行為”)を認識することなのだと力説している。両方とも把握せず、また受け入れられない事を裁いてしまう(審判的態度)とケースワークはたちまち「非現実的な、ごっこ遊び」に堕ちてしまう。支援者として反省しなければならない言葉だと思う。
そうならない為には”obstacles to acceptance”の逆を行わなければならない。例えば、人間の行動パターンに対して深く理解すること、差別偏見意識を克服すること、クライアントに対する敬意を持ち続けること等々は必須だ。
ここまで、クライアントとワーカーの関係におけるバイステックの原理について考えてきた。パラレルプロセスによって、クライアントとワーカーの関係におけるバイステックの原理を、クライアントをワーカーにワーカーをスーパーバイザーに置き換えて、考えてみよう。
前述の
「援助を求めるクライアントには、様々な心理的な規制(葛藤、不安、抑圧)が沸き起こるため、クライアント自身が自身の置かれている状況を客観的に認識し、前向きに問題に立ち向かっていくことができなくなっている。その解決策は、前々回の投稿の”purposeful expression of feelings””controlled emotional involvement”によって、クライアントが自分で課題を整理するようにワーカーが励まし促すのであるが、そのためにも様々な心理的規制を引き起こさないようにすることが不可欠となる。”Acceptance”とはそのためにも必要なケースワーカーの態度なのだ。」を置き換えると、
援助を求めるワーカーには、様々な心理的な規制(葛藤、不安、抑圧)が沸き起こるため、ワーカー自身が自身の置かれている状況を客観的に認識し、前向きに問題に立ち向かっていくことができなくなっている。その解決策は、前々回の投稿の”purposeful expression of feelings””controlled emotional involvement”によって、ワーカーが自分で課題を整理するようにスーパーバイザーが励まし促すのであるが、そのためにも様々な心理的規制を引き起こさないようにすることが不可欠となる。”Acceptance”とはそのためにも必要なスーパーバイザーの態度なのだ。
重度知的障害者の支援を行う生活支援員(ワーカー)は、意思決定・表明に困難性を持つクライアントの行動に迷いながらも関わらなければならない。ネガティブなクライアントへの感情や仲間、自分、組織への感情が心の中に渦巻くことあるかもしれない。一方、高い倫理性を求める組織であればあるほど、ワーカーには自身のネガティブな感情を抑制する心理的規制が働くかもしれない。その際、スーパーバイザーに求められるのは、”Confidentiality”である。
バイステックは、”Confidentiality”の章で、次のように定義している。
Confidentiality is the preservation of secret information concerning the client which is disclosed in the professional relationship. Confidentiality is based upon a basic right of the client; it is an ethical obligation of the caseworker and is necessary for effective casework service. The client’s right, however, is not absolute. Moreover, the client’s secret is often shared with other professional persons within the agency and in other agencies; the obligation then binds all equally.
(Lookeron訳)
”Confidentiality”とは、専門的な(援助)関係において明らかにされたクライアントに関する秘密の情報を保全することである。 ”Confidentiality”はクライアントの基本的な権利に基づいている。 これはケースワーカーの倫理的義務であり、効果的なケースワークサービスのために必要である。 ただし、クライアントの権利は絶対的なものではない。 さらに、クライアントの秘密は、機関内や他の機関の他の専門家と共有されることがよくあり、その場合、(”Confidentiality”)の義務はすべての人を平等に拘束する。
When the client applies for help or service at a social agency, he realizes in some way the necessity of revealing pertinent facts about himself and his situation to the caseworker. This may include, in some cases, his innermost feelings, which he wants no one else to know about. It may include facts about previous behavior which, if generally known to his friends or neighbors, would detract from or destroy his personal reputation. It may include “skeletons in the family closet” which are a source of embarrassment to him.
He communicates this secret information upon the condition, at least implicitly made, that it is necessary for the help he is seeking. He assumes that the information will not go beyond the persons engaged in helping him. He definitely does not want to exchange his reputation for the casework help he is seeking.
He enters the casework relationship with that understanding. Therefore the caseworker’s preservation of secret information is an essential quality of the relationship. If a client ever became aware of an individual caseworker’s violation of confidentiality, the relationship would be destroyed.
(Lookeron訳)
クライアントは、社会サービス機関に援助やサービスの申請時、何らかの方法で自分自身と自分の状況に関する事実を適切にケースワーカーに明らかにしなければならないと理解している。 場合によっては、これにはクライアントの心の奥底にある感情が含まれ、そのことを誰にも知られたくない場合もある。 それには、クライアントの友人や隣人に一般的に知られると、クライアント自身の評判を損なったり壊したりする過去の行動に関する事実が含まれる場合もある。 その中には、クライアントにとって羞恥の源となるような”身内の恥”(家族のクローゼットの中の骸骨)も含まれるかもしれない。
クライアントは、少なくとも暗黙のうちに、自分が求めている援助のために必要という条件において、この秘密の情報を伝える。 クライアントは、情報はクライアントを援助している人々を超えて渡されることはないと思っている。 クライアントは、自分が求めているケースワークによる援助を得るために自分の評判を引き換えにしようとは絶対に思っていない。
クライアントはそのことを理解した上でケースワーク関係に入る。 したがって、ケースワーカーが秘密の情報を保全することは、ケースワーク関係の本質的な性質だ。 一人でもケースワーカーの守秘義務違反にクライアントが気づいてしまったら、(ケースワーク)関係は崩壊してしまう。
The promised secret is one in which the confidant gives an assurance, a promise, after he has learned the secret that he will not divulge it. The subject matter of the promised secret may include the defamatory facts of a natural secret or it may include nondefamatory facts about the client’s personal life which he does not want revealed.
The entrusted secret is information which is communicated to a confidant with the previous explicit or implicit understanding that the matter will not be revealed. The subject matter may or may not include a natural secret. The entrusted secret implies a contractual agreement between two persons which binds the confidant to secrecy even when the matter is not of a defamatory nature.
(Lookeron訳)
約束された秘密とは、信頼された者が秘密を知った後に、それを漏らさないという保証、約束を与えるものである。 約束された秘密の主題には、自然の秘密で名誉を毀損するような事実が含まれる場合もあれば、名誉が毀損されることではないがクライアントが明らかにされたくない私生活上の事実が含まれる場合もある。
委託された秘密とは、問題が明らかにされないことが事前に明示または暗黙に理解した上で信頼された者に伝えられる情報である。 主題として自然の秘密が含まれる場合と含まれない場合がある。 委託された秘密は、たとえ問題が名誉を毀損する性質のものでない場合でさえも、信頼された者に秘密を負わせる 2 人の間の契約上の合意を意味する。
これを、同様に、クライアントをワーカーにワーカーをスーパーバイザーに置き換えてみよう。
”Confidentiality”とは、専門的な(援助)関係において明らかにされたワーカーに関する秘密の情報を保全することである。 ”Confidentiality”はワーカーの基本的な権利に基づいている。 これはケースワーカーの倫理的義務であり、効果的なケースワークサービスのために必要である。 ただし、ワーカーの権利は絶対的なものではない。さらに、ワーカーの秘密は、機関内や他の機関の他の専門家と共有されることがよくあり、その場合(”Confidentiality”)の義務はすべての人を平等に拘束する。
ワーカーは、社会サービス機関に援助やサービスの申請時、何らかの方法で自分自身と自分の状況に関する事実を適切にスーパーバイザーに明らかにしなければならないと理解している。 場合によっては、これにはワーカーの心の奥底にある感情が含まれ、そのことを誰にも知られたくない場合もある。 それには、ワーカーの友人や隣人に一般的に知られると、ワーカー自身の評判を損なったり壊したりする過去の行動に関する事実が含まれる場合もある。 その中には、ワーカーにとって羞恥の源となるような”身内の恥”(家族のクローゼットの中の骸骨)も含まれるかもしれない。
ワーカーは、少なくとも暗黙のうちに、自分が求めている援助のために必要という条件において、この秘密の情報を伝える。 ワーカーは、情報はワーカーを援助している人々を超えて渡されることはないと思っている。 ワーカーは、自分が求めているケースワークによる援助を得るために自分の評判を引き換えにしようとは絶対に思っていない。
ワーカーはそのことを理解した上でスーパービジョン関係に入る。 したがって、スーパーバイザーが秘密の情報を保全することは、スーパービジョン関係の本質的な性質だ。 一人でもスーパーバイザーの守秘義務違反にワーカーが気づいてしまったら、(スーパービジョン)関係は崩壊してしまう。
約束された秘密とは、信頼された者が秘密を知った後に、それを漏らさないという保証、約束を与えるものである。 約束された秘密の主題には、自然の秘密で名誉を毀損するような事実が含まれる場合もあれば、名誉が毀損されることではないがワーカーが明らかにされたくない私生活上の事実が含まれる場合もある。
委託された秘密とは、問題が明らかにされないことが事前に明示または暗黙に理解した上で信頼された者に伝えられる情報である。 主題として自然の秘密が含まれる場合と含まれない場合がある。 委託された秘密は、たとえ問題が名誉を毀損する性質のものでない場合でさえも、信頼された者に秘密を負わせる 2 人の間の契約上の合意を意味する。
このように”Confidentiality”が成り立つことは、ワーカーがクライエントに対して前向きに向き合っていくためにも、ワーカーの感情に対して、”purposeful expression of feelings”と”controlled emotional involvement”の原則でスーパーバイザ―が関わる前提として不可欠なのである。ここが、バイステック原理において利用者支援と支援者支援の差異なのだ。スーパービジョンとして関わる際の原則としてバイステックの原則を編集すると以下のようになる。
バイステックの7原則(スーパービジョン版)
confidentiality(本音を告白してもらい信頼関係を構築する)
individualization(一般化しない)
acceptance(事実・真実を受け入れる)
the nonjudgmental attitude(裁かない態度、一方的に非難しない)
purposeful expression of feelings(目的を持った感情表現)
controlled emotional involvement(コントロールされた情緒的関与)
caseworker self-determination(ワーカーが自分で行動できるよう決断してもらう)
利用者支援を行うのは、直接の支援者である。直接の支援者が自律的に利用者に寄り添い支援ができるようになるには、スーパーバイザーの立場にいる者が、支援者を応援支援することが求められる。そのためには、ワーカーに対する敬意も持たなければならない。
ケアプランも個別支援計画もスーパービジョンを伴っていないとただの紙切れ、トリセツに堕ちてしまう。バイステックの著作にはまだまだ興味深い論点がたくさんあるが、本日はここまでにしたいと思う。(英訳疲れました)